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導入事例

株式会社静岡銀行さまproost

不正検知サービス『Detecker』
導入の背景と導入効果について導入企業インタビュー

 創業80周年を迎えた静岡銀行は、地域密着型金融の推進における基本方針を「基本理念 ”地域とともに夢と豊かさを広げます。” の実践を通じて、地域との共生による持続的成長を実現する。」と定め、さまざまなニーズに応じた付加価値の高い金融サービスの提供を目指している。

 そのような中、静岡銀行は安心安全な金融取引のお客さまへの提供を目的にACSiONが提供する不正検知プラットフォーム『Detecker』(ディテッカー、※特許出願済)の導入を進めている。近年、一連の犯罪行為は組織化・分業化が急速に進んでおり、不正グループは役割を分け、複数の業界を横断して不正を働くようになっている。犯罪行為が複雑化する中、攻撃者の不自然な兆候(振る舞い)を早期に発見し、犯罪行為を実行する前に未然に防止する取り組みが必須となってきている。

 『Detecker』は、不正口座開設申込や不正ログインに対し、不自然な兆候をシステム検知するとともに、長年金融犯罪対策に従事する専門のモニタリングチームによる深堀りを行い、利用企業に連係する等のサービスを提供している。また、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン対応では、セブン銀行が培ってきた金融犯罪対策の緻密なノウハウを不正検知モデルとして搭載し、疑わしい取引への対応(FATF対応)で求められる実効性の高いモニタリング(異常取引の検知)を実現している。

 今回、『Detecker』を導入したクライアント企業でもある静岡銀行における導入の背景や導入後の変化や効果などについて、櫻井 啓貴さん(静岡銀行 コンプライアンス部 マネロン等金融犯罪対策統括グループ 課長)、飯田 彩乃さん(静岡銀行 デジタルチャネル営業部 デジタルチャネル営業企画グループ 課長)にインタビューを行った。

非対面取引のリスク低減措置強化と口座開設時の不正検知高度化に向けて

【櫻井さん】インターネットを通じた非対面取引は、NRA(National Risk Assessment:犯罪収益移転危険度調査書)においてリスクが高い領域とされており、金融機関において、リスク低減措置を的確に行う必要がある分野です。しかし、疑わしい取引の参考事例にも記載されているIPアドレスや端末情報をもとに不正検知を行い、それらが疑わしい取引であるかどうかを的確に判断することは、当行にとっても専門性が高く、なかなかノウハウが積み上がっていない分野でもあり、リスク低減措置の強化を図るという点では課題と感じていました。

櫻井 啓貴さん

【飯田さん】非対面口座開設の不正検知対策は、運用面について大きく3つの課題を感じていました。1つ目はルールをEXCELなどで管理していたため高度なルール設定が難しいという点。2つ目は一部の行員の属人的な運用などもあり休暇や退職等におけるノウハウの継続が難しいという点。そして、3つ目は手作業のチェックにつき、複数リストとの複合的なチェックが困難である点です。

飯田 彩乃さん

【飯田さん】当行は、非対面での口座開設申込業務のモニタリングについて、以前は銀行内のリストと照合し、住所や地域をチェックするためにIPアドレスを分析するなど、専門人員が一日中張り付き手作業で確認、といった属人的な対応を行っていました。全国のお客さまを対象としているインターネット支店を保有している一方、不正取引における地理的な特性等に関するノウハウがなく、不正の判定が難しい、金融犯罪が高度化・複雑化する中、当行独自の判断基準や属人的な分析に限界がある、といった課題を感じていたところ、ACSiONの不正検知サービス『Detecker』と出会いました。人手不足や専門人材の退職などによるノウハウの断絶という課題もあり、このような専門分野においてはシステムで対応した方が良いのではないかと考えた点も『Detecker』導入に至った経緯となります。

Detecker導入により見えてきた効果

【櫻井さん】Detecker導入により不正利用目的の口座開設を遮断できているかは、直接的な指標がないため、当行では凍結口座の件数の推移から分析しています。凍結口座は主に警察など外部からの要請により、口座を凍結したり強制的に解約する必要性が生じた口座を指しますが、これは、口座が悪用されているということにつながりますので、本来、口座開設の前にリスク低減措置が図られているということが重要になります。2020年に『Detecker』導入後は、凍結口座件数が導入前の増加傾向から減少傾向に変化していますので、的確な不正検知に基づくリスク遮断が効果的に機能したものと考えています。
また、少しでもリスクがあるのではといって、合理的な理由なく、あれもこれも過度に謝絶することは適切な対応とは言えません。当行では、『Detecker』導入後、謝絶の件数は導入前の増加傾向から減少傾向に変化しました。

リスク低減措置を強化すると同時に、不正検知の正確性が改善した結果、謝絶の件数が減少したものと思われます。これはリスクベース・アプローチに基づく、実効的な対策の実施につながるものと考えます。

データから見る凍結口座の傾向について

 【櫻井さん】『Detecker』導入前は、凍結口座のうち開設後1年以内に不正利用によって凍結される口座の割合が9割以上を占めていました。

また、年代別に見ると、特に20代が多く4割弱を占め、その中でも20代男性の割合が多かったため、他の年代と比べてリスクが高いと評価していました。

そのような中、『Detecker』導入後は大きく改善し、期間別・年代別の偏りが解消されたため、特定の犯罪グループからの申し込みを適切に検知・遮断できているものと思われます。

また、『Detecker』導入前は、運用部署がどのような観点で分析しているかという審査ルールが言語化されておらず、統括部署に対して情報共有されていなかったため、どのような点にリスクの所在があるのかといったことが不明瞭であったことが課題でもありました。

リスク評価では、そういったリスクやそれに対するルールの言語化が重要であり、非対面取引の分野では、『Detecker』導入によって解決されたと考えています。

 どこをチェックすべきかが明確になればPDCAを回す上でも有効となり、新たな手口の犯罪が発生したとしても、過去の事例との比較等詳細な傾向分析が可能となり、どこに重点を置くべきかが明確になるものと考えています。また、定期的なルールのチューニングについても、ACSiONから敷居値の調整などアドバイスをいただきながら、統括部署と運用部署が協力し合い改善に向け議論しており、より効果的な運用ができていると考えています。

銀行内の業務やお客さまからの問合せの変化について

【飯田さん】現在当行ではWebでの口座開設業務の不正検知について、『Detecker』で1次チェックを行い、Deteckerで一定の点数以上を対象に行員が2次チェックを行うフローとしています。

『Detecker』導入前は行員が個別にチェックが必要な検証対象口座の割合は3割程度でしたが、『Detecker』導入後は1割程度まで減少しています。

 また、検証期間の短縮という点でも効果がありました。従来は検証対象口座の審査結果が出るまでに1ヶ月ほどかかるケースもあり、CS(顧客満足度)の観点で課題がありましたが、『Detecker』導入後は、検証対象口座の審査結果を数日でお客さまに通知することが可能となり、その結果、お客さまからの口座開設の審査や謝絶に関する問い合わせが大幅に減少しました。
 そして、検証にかかる処理時間も大幅に短縮し、不正検知対象のために1日中張り付く必要もなくなりました。

さらに、『Detecker』の導入により審査が属人的にならず、検知の精度が向上したことにより業務の平準化にもつながりました。それによって、1日当たりの行内の処理時間も大幅に減少し、お客さまに早めに通知できるようになり、CS(顧客満足度)の観点でも効果が出ていると感じています。

■不正送金ではなく、口座開設に対する不正対策を重視している理由について

【櫻井さん】不正送金の対策は重要ではありますが、一旦取引を開始してしまうと口座を強制的に解約することはとてもハードルが高いものとなります。そのため、不正対策を強化する上では、まず入り口の段階でシャットアウトし、不正利用を目的とする者との取引を開始しないといったことが最初の一歩としてとても重要だと考えています。

不正対策の導入に至るポイントについて

【飯田さん】Deteckerの不正検知機能を最初から銀行の全ての取引を不正検知の対象にするとコスト面はじめインパクトや負担も大きいため、まずは、属人的な業務が多いとの課題認識を持っていたインターネット支店の口座開設業務にフォーカスし、スモールスタートで導入に着手しました。その結果として、想定以上の効果が得られたこともあり、次のステップとして継続的な顧客管理業務など不正検知の対象を広げています。このように不正検知の分野は重要である一方、コストが必要な領域でもあり、スモールスタートで費用対効果を着実に示しながら領域を広げていくというアプローチをとっています。

【櫻井さん】マネロン防止対策の強化は直接コスト削減に結びつくものではありませんが、非対面取引推進により拡大していく中、リスクベース・アプローチの観点から継続的に取り組んでいく必要があります。近年急速に高度化する金融犯罪に対しては、迅速に有効な対策を講じ、企業やお客さまの信頼を得ることが一層重要になっており、これからも更に実効性を高め、マネロン等の金融犯罪に利用されない金融サービスを提供できるよう体制の構築に取り組んでいきたいと思います。

不正対策についての今後展望について

【飯田さん】現在は、口座開設、継続的顧客管理で『Detecker』を利用しています。
静岡銀行では、他の商品もWEBで申込みができますので、これからはそういったWEB申込みにも『Detecker』の利用シーンを展開させていただきまして、お客さまの安心安全な取引につなげていきたいと考えています。

あとがき

 近年、多くの金融機関が非対面取引の推進を進めている。「安心安全な金融取引の提供」は、静岡銀行のみならず、全ての金融機関にとって共通のテーマと言える。日々、変化する犯罪に対し、定期的にルールを見直しながら、継続的にリスク対策を講じることが今後より一層求められるのではないだろうか。